工場やプラントにおいて、蒸気や熱湯、高温の化学薬品などを流す配管設備では、温度変化による「金属の伸び縮み(熱伸縮)」への配慮が欠かせません。金属が熱によって膨張する力(熱応力)は配管に大きな負荷を与え、逃げ道を失うと配管そのものが折れ曲がったり、接合部から突発的な破断や漏えいを引き起こしたりする原因になります。この記事では、配管の熱膨張がもたらすリスクや不具合事例、そして設計・加工段階で検討したい基本的な対策について解説します。
配管材料として使われる炭素鋼(鉄)やステンレス鋼などの金属は、温度が上がると伸び、温度が下がると縮むという物理的な性質を持っています。この温度差による伸縮量(熱変位)は、配管が長くなるほど、また流体の温度が高くなるほど大きくなります。
実務的な目安として、例えば150℃の過熱蒸気を通す100mの炭素鋼配管の場合、常温(20℃)から稼働を開始するだけで、配管は軸方向に約15cm以上も伸びようとします。ステンレス鋼であれば、さらに伸縮量は大きくなります。この目に見えるほどの「伸び」を計算に入れずに配管を固定してしまうと、設備全体に過度なストレスがかかることになります。
配管の伸びを逃がさず、両端を強固に固定した状態で高温流体を流した場合、逃げ場を失った熱変位は「圧縮応力」となって配管内部に蓄積されます。これを放置すると、現場では以下のようなトラブルに発展する恐れがあります。
長尺の配管や比較的肉厚の薄い配管では、熱応力がパイプの耐荷重限界を超えた際に、配管自体が横方向にくねくねと折れ曲がるように変形(座屈)してしまうことがあります。一度変形した配管は元の形状に戻りにくく、内部の流動バランスを損ねる原因になります。
工場の運転開始(加熱)と停止(冷却)に伴う熱伸縮は、配管の接合部に対して「繰り返し応力」として作用します。特に、強度が不連続になりがちな現場の溶接部やフランジの接続境界などにストレスが集中しやすく、長年の熱サイクル疲労によって微細なひび割れ(クラック)が入り、最終的には流体の漏えい事故を招く危険性があります。
配管に無理な力をかけずに熱膨張を逃がすためには、設計段階からの構造コントロールが求められます。一般的には、以下のような対策アプローチがとられています。
配管のすべての箇所を固定するのではなく、配管が軸方向に抵抗なく滑る(動ける構造にする)ための「自由支持」を要所に配置します。同時に、すべての伸びが一箇所に偏って接続機器(ポンプやバルブ)を破損させないよう、伸縮をコントロールする起点となる「固定点(アンカー)」を適切に計算して配置する手法が基本となります。
直管が軸方向に伸びる力を、経路を意図的に迂回させた「立ち上がり部」のしなり(弾性)によって吸収する設計手法です。これを「オフセット配管」や「ループ配管」と呼び、プラント設計において信頼性の高い伸縮吸収手段の一つとされています。
熱伸縮を逃がすためのループ配管を形成する際、その「作り方(工法)」によって設備の耐久性や将来的なメンテナンスの手間に差が生まれることがあります。
一般的なエルボ継手を現場でいくつも溶接してループを作る場合、1つのコの字ループを作るだけで多くの溶接箇所が必要になります。現場での溶接部は熱による組織変化などで応力が集中しやすく、繰り返しの伸縮運動によって疲労クラックが発生するリスクが比較的高いとされています。また、溶接部に対する定期的な検査が必要になるなど、維持管理の負担が増えやすい面もあります。
一方で、ベンダーマシンを用いて一本の長い配管を直接3次元的に曲げてループを作るアプローチもあります。 この工法であれば、ループ内に溶接継手を持たない連続体を構築できます。曲がり部がなだらかな形状(Rベンド)になるため、熱変位による力が一部に集中せず配管全体に分散されやすいという特徴があります。これにより、将来的な漏えいリスクや点検の手間を引き下げる効果が期待できます。
配管の熱膨張・熱伸縮対策は、温度変化による物理的な動きをあらかじめ予測し、それを安全に逃がすためのサポート配置やループ構造を設計段階から織り込んでおくことがポイントとなります。突発的な変形や割れ、漏えいを防ぎ、設備の健全性を維持するためには、事後保全に頼らない構造的なアプローチが有効です。
現場のスペースに応じたループ配管のレイアウト設計や、溶接箇所を減らす一体曲げ加工など、求める耐久性やコストバランスに応じて、適切な技術提案や加工を行ってくれる専門の加工管メーカーを選ぶことが推奨されます。当メディアでは、さまざまな技術力や設計ノウハウを持つ加工管メーカーをご紹介していますので、選定や比較検討の際はぜひ参考にしてみてください。
当メディアは加工管メーカーを特集したメディアです。新規導入や入れ替えを検討している方は是非お役立てください。
加工管メーカー探しをサポートする本メディア「カコチョイス」では、他にも配管トラブルの基本知識をまとめています。併せてご覧ください。
引用元:シンテック公式HP
https://shin-tech.jp/business/prefab/
継手内側の保護層を一体で成形した構造を採用。内側に保護層を重ねる従来の継手と違い、洗浄しても浮きや剥がれが起きない。剥離片による異物混入や製品の廃棄を防ぐ。
| 対応材質 | 鋼管、ステンレス、ポリエチレン、ナイロン、硬質塩化ビニル |
|---|---|
| 加工技術 | つば出し・バーリング・ルーズフランジ・ネジ切りなど |
引用元:ノーラエンジニアリング公式HP
https://www.nowla.co.jp/
溶接を使わないつば出し加工とフランジ接合で、強度の高い継手構造を採用。消防認定※を受けた継手部が高い密着性を確保することで、瞬間的な加圧でも破裂や漏れのリスクを抑えられる。
| 対応材質 | 鋼管、ステンレス、ライニング管 |
|---|---|
| 加工技術 | つば出し·溶接·ネジ切り·フランジ·グルービングなど |
引用元:カワトT.P.C.公式HP
https://www.kwt-tpc.co.jp/prefab/
止水栓と継手を一体化した構造で、本来現場で行う締め付け作業が不要。ワンタッチ接続のため、配管を差し込むだけで固定できる。体が入りにくい狭い場所でも、工具を使わず短時間で施工することが可能。
| 対応材質 | ポリエチレン、ポリブテン、エルメックス樹脂管 |
|---|---|
| 加工技術 | 曲げ加工·切断加工·継手組込みなど |
※参照元:ノーラ・エンジニアリングHP(https://www.nowla.co.jp/download/certificate.php)