半導体や液晶、医薬品、各種化学薬品の製造プラントにおいて、プロセス流体に含まれる微細な不純物や異物を確実に除去することは、製品の歩留まりや安全性を左右する重要な要素です。この高度なろ過工程を安定的かつ効率的に行うために、周辺配管や計器類を一体化した「純水・薬液ろ過ユニット(フィルターユニット)」の導入が多くの現場で選ばれています。
この記事では、純水・薬液ろ過ユニットの基本的な構造から、工場製作(ユニット化)を選択するメリット、超クリーンな環境に対応する配管加工の重要性、選定時のポイントまでを分かりやすく解説します。
純水・薬液ろ過ユニットは、流体から微粒子や有機物を物理的に除去するフィルターエレメント(カートリッジ)と、それを密閉収納するハウジングを中心に、差圧計、流量計、サニタリー配管、各種バルブ類を共通の架台上に一体化した設備です。
単にろ過器を配管で繋ぐだけでなく、流速の均一性や圧力損失の低減、メンテナンスのしやすさをあらかじめ計算して組み立てられたパッケージシステムである点が大きな特徴です。
従来の現場では、現地に搬入された個別の機器や管材を、その場で切断・面取りし、溶接や融着を繰り返して組み上げる「バラ組み工法(在来工法)」が一般的でした。しかし、現場環境は浮遊する塵埃(ちり・ほこり)が舞い込みやすく、不安定な温度変化や狭い作業空間など、接液部のクリーンネスを損なう要因が多く存在します。
純水やデリケートな薬液を扱うろ過システムにおいては、清浄度が厳格に管理された専門工場内のクリーンエリアで精密にアセンブリ(組み立て)を行うことで、目に見えない汚染や施工欠陥を抑えることが可能です。また、現場での配管工数を抑え、全体的な工期管理を円滑にする上でも工場製作が推奨されます。
流体システムにおけるろ過ユニットの中心的な機能は、指定された条件に沿って微細な固形粒子を確実に捕捉すること、ハウジング内での液の滞留や偏った流れを防ぐこと、およびエレメントの目詰まり状況を差圧計等によって中央集中監視することです。システム全体の安定稼働において、下流の設備を守る防波堤の役割を果たしています。
万が一、配管の設計や施工の不備によってろ過性能が低下した場合、下流の超精密プロセスにおいて以下のような不具合を引き起こす原因となります。
複雑な管端加工や精密溶接などの工程をすべて現場から排除し、あらかじめ完成したユニットを現場の主配管と一括接続するのみの施工に集約できます。これにより、現場の狭い場所での作業ミスを軽減し、工事にかかる管理コストの抑制にも貢献します。
環境が制御された工場内で、校正された自動溶接機や専用の樹脂融着機を使用するため、作業者の技量による仕上がりのばらつきが発生しません。出荷前に安全弁の動作チェックや規定の圧力をかけたリークテストを確実に実施できるため、現地立ち上げ時における微小な液漏れや不具合を抑えることができます。
3次元の流体解析や構造設計を用いることで、各機器やバルブ、配管の干渉を回避しながら、高密度にレイアウトすることが可能です。一般的な引き回し配管と比較して設置面積を小さく抑えられるため、工場内の限られた有効スペースを無駄なく活用できます。
純水・薬液ろ過ユニットは、流体をろ過する「フィルターエレメント」と「フィルターハウジング」を中心に構成されます。そこに、前後の圧力を計測する差圧計、流量計、内面が滑らかなサニタリー配管やバルブ、全体を強固に固定する共通架台(フレーム)などが一体化されます。
ステンレス鋼(主に耐食性の高いSUS316Lなど)を用いる場合、機械的な切削だけでは内壁に微細な凹凸が残り、そこに不純物が蓄積して洗浄時にも離脱しにくくなります。この対策として、陽極酸化反応を応用して表面を鏡面化する「電解研磨(EP)処理」が施されます。
電解研磨によって内壁が滑らかになるだけでなく、表面の鉄成分が選択的に除去され、表面に安定した酸化クロム主体の不動態化被膜が形成されます。これにより、強酸や超純水と接触した際の金属イオンの溶出を低レベルに抑えることが可能となります。また、溶接時の大気接触による酸化スケールの発生を防ぐため、管内部に不活性ガスを封入するバックシールドパージを徹底する加工技術も不可欠です。
金属イオンの溶出が許されない強腐食性薬液ラインや超純水ラインでは、PVDFやPFAなどのフッ素樹脂配管が使用されます。これらの樹脂接合は、不純物溶出の要因となる接着剤を一切使わず、熱で管端同士を加熱溶融して接続する「熱融着技術」が用いられます。
通常の融着方法では、加圧によって溶融した樹脂が内側へはみ出し、「内面ビード(融着バリ)」を形成してしまいます。このバリは流路抵抗となるだけでなく、背後に液溜まりを作って細菌繁殖の足場となってしまいます。そのため、高度なユニット製作では、非接触で均一に加熱する赤外線(IR)溶着や、内側からバルーンで圧力をかけてバリの発生を抑える「ビードレス溶着技術」などが用いられ、内面の完全な平滑性を確保する加工が行われます。
フィルターの前後で発生する圧力損失は、送液ポンプのエネルギー消費を増大させ、ろ過効率そのものを引き下げる要因となります。特に急激な方向転換を行うエルボ継手を多用すると、内側で流れの剥離や激しい渦(乱流)が発生し、エネルギー損失が著しく高くなります。
これに対し、なだらかな曲率半径を持たせた「大R曲げ(ベンド加工)」を配管レイアウトに適用することで、流体は剥離を起こさずにスムーズに方向を変えるため、不要な圧力損失の発生を抑え込むことが流体力学的にも立証されています。
純水・薬液ろ過ユニットは、半導体やフラットパネル製造工場における超純水製造システムや、ウエハの湿式洗浄ライン、ケミカル供給ラインで不可欠な設備となっています。
また、製薬・バイオプラントにおける注射用水の循環や原薬調合の最終ろ過、化学・ファインケミカル分野でのレジスト液や有機溶剤の精製ライン、さらには食品・飲料工場における原料水の清浄化やビールの無菌ろ過など、徹底した除粒子と衛生管理が求められる重要プロセスで幅広く採用されています。
詳細設計や調達の担当者がろ過ユニットを選定する際は、引き渡し後の運用を見据えた確認が大切です。まず、定期的な消耗品交換を想定し、「エレメントを真上に抜き取るための上部空間」やドレンバルブへのアクセス性が、周囲のダクトや配管と干渉せずに確保されているかを検証します。
次に、エレメントの寿命を適正に管理するため、初期の圧力損失から限界値に至る変動を確実に検知して制御システムへ信号を出力できる計装・差圧管理の仕様になっているかを確認します。さらに、先端プロセスにおいては、接液部からの汚染を防ぐための材料証明書(ミルシート)や電解研磨の表面粗さ証明、溶接・融着時の加工データなどの完全なトレーサビリティの提出、およびクリーンパッケージ包装での納品に対応できる体制があるかを事前に精査することが推奨されます。
純水・薬液ろ過ユニットは、先端プラントプロセスの清浄度を支える中心設備であり、そのアセンブリ品質と配管加工レベルは製品の品質に直結します。
サニタリー規格に準拠した電解研磨やバックシールド管理、液溜まりを防ぐ高度なビードレス樹脂融着、圧損を抑えるなだらかなベンド配管など、高品質なライン構築には専門的な技術が求められます。発注の際は、単に機器を並べるだけでなく、流体力学に基づいたレイアウト設計力を持ち、材料や加工記録の完全なトレーサビリティに対応できる技術力を備えた専門メーカーを選ぶことが大切です。当メディアでご紹介している加工管メーカーの情報を、ぜひ比較検討の参考にしてみてください。
当メディアは加工管メーカーを特集したメディアです。新規導入や入れ替えを検討している方は是非お役立てください。
加工管メーカー探しをサポートする本メディア「カコチョイス」では、他にも機能別で配管設備の基本知識をまとめています。併せてご覧ください。
引用元:シンテック公式HP
https://shin-tech.jp/business/prefab/
継手内側の保護層を一体で成形した構造を採用。内側に保護層を重ねる従来の継手と違い、洗浄しても浮きや剥がれが起きない。剥離片による異物混入や製品の廃棄を防ぐ。
| 対応材質 | 鋼管、ステンレス、ポリエチレン、ナイロン、硬質塩化ビニル |
|---|---|
| 加工技術 | つば出し・バーリング・ルーズフランジ・ネジ切りなど |
引用元:ノーラエンジニアリング公式HP
https://www.nowla.co.jp/
溶接を使わないつば出し加工とフランジ接合で、強度の高い継手構造を採用。消防認定※を受けた継手部が高い密着性を確保することで、瞬間的な加圧でも破裂や漏れのリスクを抑えられる。
| 対応材質 | 鋼管、ステンレス、ライニング管 |
|---|---|
| 加工技術 | つば出し·溶接·ネジ切り·フランジ·グルービングなど |
引用元:カワトT.P.C.公式HP
https://www.kwt-tpc.co.jp/prefab/
止水栓と継手を一体化した構造で、本来現場で行う締め付け作業が不要。ワンタッチ接続のため、配管を差し込むだけで固定できる。体が入りにくい狭い場所でも、工具を使わず短時間で施工することが可能。
| 対応材質 | ポリエチレン、ポリブテン、エルメックス樹脂管 |
|---|---|
| 加工技術 | 曲げ加工·切断加工·継手組込みなど |
※参照元:ノーラ・エンジニアリングHP(https://www.nowla.co.jp/download/certificate.php)