工場やプラントの配管設備において、流体の経路切り替えや流量制御を担うバルブは欠かせない要素です。しかし、複数のバルブを個別に配管でつなぎ合わせると、広大なスペースが必要になるうえに、継手(つぎて)の増加による漏れのリスクも高まります。
こうした課題を解決するために採用されるのが、複数のバルブをひとつのブロックに集約した「バルブマニホールドユニット(集合弁ユニット)」です。この記事では、マニホールドユニットの基本的な構造から、工場製作(プレハブ化)によるメリット、加工技術のポイントまでを分かりやすく解説します。
バルブマニホールドユニットは、流体プロセスで必要となる複数の手動バルブや自動弁(電磁弁・空気作動弁)、流量計、各種センサ類を、「マニホールド(集合流路)」と呼ばれるひとつの基盤に極めて近接した状態で集約し、一体化した配管設備です。
金属や樹脂のブロックの内部に高精度な分配・合流路を彫り込み、そこにパネル形バルブなどを直接ネジ留め(またはフランジ接続)する構造が一般的です。
従来の工法では、バルブを個別に配置し、それらを長い接続管やエルボ継手でつなぎ合わせていました。しかし、この方法は接続箇所が多くなるため流体漏れのリスクが高く、自動弁を動かすためのエア配管(チューブ)や制御配線を現場で一から敷設する手間がかかっていました。
バルブマニホールドユニットは、配管やバルブ、制御配線、さらには保温・保冷カバーに至るまでを工場内でシステムとして組み立てるため、現場での配管工数と複雑な工程管理を効果的に削減できます。
マニホールドユニットの中心的な機能は、狭小なスペースで多系統の流路切り替えや圧力制御を瞬時に行うことです。複数のバルブが1箇所に集約されているため、メンテナンス要員はユニットの近くに寄るだけで、複数の自動弁の開閉状態や漏れの有無などを一度に監視でき、異常の早期発見が容易になります。
食品・飲料工場や製薬プラント、半導体の純水ラインなどにおいて、マニホールドユニットは「デッドレッグ(分岐部の液溜まり・滞留部分)」を抑制する重要な役割を果たします。
配管内に流体が滞留する箇所があると、そこから細菌が繁殖したり、製品へのコンタミネーション(汚染)が生じたりする原因となります。マニホールドユニットはバルブ同士の距離を極限まで近づける設計により、液溜まりを極小化(各種国際規格の基準値以下に低減)することで、システムの安全性と無菌性を向上させています。
バルブを固定するためのブラケット製作や、複雑な自動弁操作用のエアチューブの引き回しが、工場を出荷する時点ですでに完了しています。現場では、外部からの主配管をユニットの接続ポートにつなぎ、集中コネクタに信号線を接続するだけで済むため、現場での作業負担が軽減されます。
電磁弁などの精密機器は、クリーンな環境での組み立てが求められます。マニホールドユニットは、工場内の安定した環境で組み立てられた後、専用のテストベンチで気密検査(リークテスト)や電気回路の作動確認を行ってから出荷されるため、現地立ち上げ時の初期動作不良を防ぐことができます。
バルブ同士の間隔を狭める高密度な集積技術により、在来工法に比べて設置スペースを格段に小さくできます。コンパクトにまとまることで、バルブ群全体をひとつの「保温BOX」で覆うことが容易になります。
高温の蒸気ラインなどで適切な保温BOXを使用すれば、個別に保温しない状態と比べて熱の放出を大きく抑えることができ、省エネにつながります。また、周囲への熱放射を防ぐことで、作業員を火傷のリスクから守る効果もあります。
ユニットは、内部に精密流路を通した「マニホールドブロック」と、そこに固定される「パネル形バルブ(集合弁)」を中心に構成されます。さらに、自動弁を動かす電磁弁やエア配管、配線をひとまとめにする集中端子箱(コネクタボックス)、温度を保つ保温BOX、流量や圧力を測るセンサ類などが一体化されています。
マニホールドユニットの製作で極めて重要になるのが、ブロック表面の高精度な加工技術です。バルブを取り付ける面自体の「平面度」にうねりや反りがあると、バルブをボルトで締結した際に不均一な面圧が生じ、パッキンの異常摩耗や内部リークを引き起こす原因となります。
そのため工場加工では、加工面の「平行度」を厳密に管理するだけでなく、金属ブロックを固定(クランプ)する際の圧力も適切に調整し、加工後や締結時の歪みを防ぐ緻密な設計が施されています。
多数のバルブが密集しているため、万が一の故障時に「他のバルブを取り外さずに、目的のバルブだけを交換できるか」というメンテナンス性が重要になります。特定のボルトを外すだけで損傷したバルブのみを素早く着脱できるような、保守性に配慮した接続方式の加工設計が求められます。
急激な熱サイクルが加わる箇所では、熱衝撃による割れを防ぐステンレス鋼やダクタイル鋳鉄が適しています。一方、半導体用の薬液プロセスなどでは、強酸・強アルカリへの耐薬品性を確保するため、テフロン(PTFEなど)を切削した流路や、超高純度向けの精密電解研磨(EP)ステンレス管が採用されます。
バルブマニホールドユニットは、化学プラントや製薬工場における多様な溶剤・薬液の調合・分配ラインで多く採用されています。
また、半導体・液晶製造装置の超純水や高純度ガスの混合ライン、ゴム製品工場の高温・高圧切替システム、さらには複数のシリンダを集中制御するFA(ファクトリーオートメーション)機械の油圧ラインなど、高精度な流体制御とクリーンな環境が求められる現場で活躍しています。
バルブマニホールドユニットを発注する際は、将来のメンテナンスを見据えた確認が大切です。まず、バルブ交換の容易性をチェックし、隣接する配管に触れずに短時間で部品交換ができる構造であるかを確認します。
食品や半導体などの衛生・クリーンプロセスにおいては、各種国際規格等に準拠した「デッドレッグ(液溜まり)が極小化された流路設計になっているか」を精査することが重要です。
また、用途によってはブロックを削り出すマニホールド構造ではなく、「配管の主管から直接フチを引き抜くバーリング加工」を用いた一体成形ヘッダー管を選ぶ方が、コストや用途(大口径ラインなど)に適している場合もあります。目的に応じて最適な加工技術を見極めることが推奨されます。
バルブマニホールドユニットは、マニホールドブロックに複数のバルブや計器をコンパクトに集約した設備です。工場であらかじめ製作することで、現場の配管工数を減らし、デッドレッグの排除や漏水リスクの低減を実現します。
安定した流体制御を行うためには、ブロックの精密な平面加工や、保守性に優れた接続構造、流体に合わせた材質選定のノウハウが求められます。導入を検討する際は、削り出しブロック技術だけでなく、バーリング加工などの代替手段も含めて、設備状況に応じた適切な設計やユニット加工を提案してくれる専門の加工管メーカーを選ぶことが大切です。当メディアでご紹介している加工管メーカーの情報を、ぜひ比較検討の参考にしてみてください。
当メディアは加工管メーカーを特集したメディアです。新規導入や入れ替えを検討している方は是非お役立てください。
加工管メーカー探しをサポートする本メディア「カコチョイス」では、他にも機能別で配管設備の基本知識をまとめています。併せてご覧ください。
引用元:シンテック公式HP
https://shin-tech.jp/business/prefab/
継手内側の保護層を一体で成形した構造を採用。内側に保護層を重ねる従来の継手と違い、洗浄しても浮きや剥がれが起きない。剥離片による異物混入や製品の廃棄を防ぐ。
| 対応材質 | 鋼管、ステンレス、ポリエチレン、ナイロン、硬質塩化ビニル |
|---|---|
| 加工技術 | つば出し・バーリング・ルーズフランジ・ネジ切りなど |
引用元:ノーラエンジニアリング公式HP
https://www.nowla.co.jp/
溶接を使わないつば出し加工とフランジ接合で、強度の高い継手構造を採用。消防認定※を受けた継手部が高い密着性を確保することで、瞬間的な加圧でも破裂や漏れのリスクを抑えられる。
| 対応材質 | 鋼管、ステンレス、ライニング管 |
|---|---|
| 加工技術 | つば出し·溶接·ネジ切り·フランジ·グルービングなど |
引用元:カワトT.P.C.公式HP
https://www.kwt-tpc.co.jp/prefab/
止水栓と継手を一体化した構造で、本来現場で行う締め付け作業が不要。ワンタッチ接続のため、配管を差し込むだけで固定できる。体が入りにくい狭い場所でも、工具を使わず短時間で施工することが可能。
| 対応材質 | ポリエチレン、ポリブテン、エルメックス樹脂管 |
|---|---|
| 加工技術 | 曲げ加工·切断加工·継手組込みなど |
※参照元:ノーラ・エンジニアリングHP(https://www.nowla.co.jp/download/certificate.php)