高層ビルやマンションの建設において、給排水や空調などの配管を縦に通す空間を「パイプシャフト(PS)」と呼びます。しかし、狭く暗い縦穴のなかで太い配管を溶接してつなぎ合わせる作業は、危険を伴い、多くの工数を必要とします。
こうした現場の負担を解消するために導入が進んでいるのが、配管や計器類をあらかじめ階高(スラブから上階スラブまでの高さ)に合わせて工場で一体化させた「シャフトユニット」です。この記事では、シャフトユニットの基本的な構造や現場導入のメリット、設計・加工時の重要ポイントを分かりやすく解説します。
シャフトユニット(配管シャフトユニット)は、給水・給湯・排水・消火などの複数系統の「立て管(主縦管)」や、各階への「分岐配管」、水量メーター、バルブなどの計器類を、自立式の鋼製架台(フレーム)に組み込んで一体化した配管設備です。
建物の鉄骨やコンクリート骨組みを積み上げるタイミングに合わせて、工場から搬入されたユニットを上部からクレーンで落とし込んで固定する工法(同時積上げ工法など)で設置されます。
従来の工法では、各階の床に開けられた穴(スリーブ)を通して、現場で何本もの重い鋼管をクレーンで吊り下げながら、足場上で溶接や接合を繰り返していました。この方法は高所での危険作業を伴うだけでなく、配管の自重を支える金具の取り付けや、床貫通部の防火・水密処理に多大な手間がかかっていました。
シャフトユニットは、配管や支持金具、さらには床貫通部のスリーブや床板までをひとつのユニットとして工場内でプレハブ化するため、現場での危険な高所作業を減らし、施工の安全性と効率を高めることにつながります。
シャフトユニットの中心的な機能は、複数の異なる流体系統を、多層階にわたって垂直搬送することです。何十メートルにも及ぶ立て管の総重量や流体の動圧は非常に大きいものですが、ユニットに備わった専用の鉄骨架台がその荷重を適切に支持するため、配管の継手部分に無理な負荷(自重応力)がかかるのを防ぐ役割を果たします。
工場であらかじめ床板やスリーブが組み込まれたユニット(フルユニット)は、実務において重要な2つの役割を担います。
工場で組み立てられたユニットを現場の建築工程に合わせて搬入するため、現場での配管作業工数を削減できます。また、かさばる配管資材やバルブ類を現場のストックヤードに一時保管する必要がなくなり、限られた現場の作業スペースを有効に活用できます。
暗く狭い現場の足場上で行われていた大口径管の溶接作業がなくなります。工場の管理された環境下で安定した自動溶接や接合が行われるため、溶接欠陥のリスクを抑え、高圧時にも漏水しにくい品質を確保しやすくなります。
異なる設備の配管(給排水、消火、ガスなど)を別々の職人が現場で施工すると、干渉や納まり不良が起きやすくなります。工場でのユニット化では、事前に3D CADやBIMを用いて配管やメーター類の干渉をシミュレーションし、隙間を縫うように高密度で配置できるため、パイプシャフト自体の面積をコンパクトに抑えることが期待できます。
シャフトユニットは、荷重を支える「自立用鋼製フレーム」と、各流体を運ぶ「立て管(主縦管)」を中心に構成されます。そこに各階へ分岐するためのメーターや減圧弁、床の開口部を塞ぐ「床板・スリーブ」、配管の振動や熱伸縮を吸収する「防振支持金物・伸縮継手」、そしてクレーンで吊り上げるための仮設金具などが一体化されています。
シャフトユニットの設計で特に重要になるのが、給湯管や空調冷温水管における「熱伸縮」への対策です。例えば、銅製の給湯立て管に熱湯が通ると、材料の特性により配管が数センチ伸びることがあります。これを両端で固く固定してしまうと、配管内に大きな力が働き、分岐部の継手を傷めるような漏水事故につながる恐れがあります。
これを防ぐため、ユニット内の加工では配管を意図的に動かす「可動支持(スライドガイド)」と、動きを拘束する「固定支持(アンカー)」を適切に配置し、必要に応じてベローズ形などの伸縮継手を組み込むことで、熱による膨張を安全に逃がす詳細な設計が行われます。
地震発生時には、建物は各階ごとに異なる揺れ(層間変位)を起こします。立て管が建物のフレームにがっちりと固定されていると、建物の変形に引っ張られて配管が傷んでしまいます。そのため、地震時の水平方向の揺れを逃がせるように「耐震振れ止め支持」と「スライド支持」を適切に使い分け、配管が建物の揺れに柔軟に追従できる構造設計が求められます。
流体の特性に応じた柔軟な材質選定も欠かせません。給水・給湯ラインでは耐食性に優れたステンレス鋼管や塩化ビニルライニング鋼管が選ばれ、排水・通気ラインでは不快な流水音を防ぐために防音被覆を巻いた耐火二層管などが適材適所で採用されます。
シャフトユニットは、超高層マンション(タワーマンション)の各戸へつながる給水・給湯・排水の立て管やメーター周りで広く採用されています。
また、高層オフィスビルや複合商業施設における空調機の冷温水立て管や消火用立て管、さらには医療用ガスや純水を扱う大型病院、各客室へ給水・給湯を行うホテルなど、多層階にわたって安定した流体供給が求められる大規模施設で欠かせない設備となっています。
シャフトユニットを発注する際は、現場の施工プロセスを見据えた事前の精査が重要です。まず、ユニットを現場のクレーンで吊り上げられるか(揚重の能力や作業スペースの確認)を検討します。
次に、建物のフレーム精度に対する「階高の誤差(累積公差)」をユニットの上下の接合部で吸収できる設計になっているかを確認します。さらに、「熱伸縮計算に基づくアンカーと伸縮継手の配置」や、「地震時の層間変位を逃がす設計」が正しく盛り込まれているかを事前にチェックすることが、導入後のトラブル回避につながります。
シャフトユニットは、立て管やバルブ、計器類を架台ごと一体化した設備です。工場であらかじめ製作してクレーンで設置することで、現場での高所作業を減らし、品質の安定化と工期の短縮を実現します。
安全で確実なシステムを構築するためには、熱伸縮や地震時の揺れを逃がす高度な配管設計や、現場の搬入プロセス(揚重計画)を見据えたノウハウが求められます。導入を検討する際は、設備状況に応じた適切な構造設計やユニット加工を提案してくれる専門の加工管メーカーを選ぶことが大切です。当メディアでご紹介している加工管メーカーの情報を、ぜひ比較検討の参考にしてみてください。
当メディアは加工管メーカーを特集したメディアです。新規導入や入れ替えを検討している方は是非お役立てください。
加工管メーカー探しをサポートする本メディア「カコチョイス」では、他にも機能別で配管設備の基本知識をまとめています。併せてご覧ください。
引用元:シンテック公式HP
https://shin-tech.jp/business/prefab/
継手内側の保護層を一体で成形した構造を採用。内側に保護層を重ねる従来の継手と違い、洗浄しても浮きや剥がれが起きない。剥離片による異物混入や製品の廃棄を防ぐ。
| 対応材質 | 鋼管、ステンレス、ポリエチレン、ナイロン、硬質塩化ビニル |
|---|---|
| 加工技術 | つば出し・バーリング・ルーズフランジ・ネジ切りなど |
引用元:ノーラエンジニアリング公式HP
https://www.nowla.co.jp/
溶接を使わないつば出し加工とフランジ接合で、強度の高い継手構造を採用。消防認定※を受けた継手部が高い密着性を確保することで、瞬間的な加圧でも破裂や漏れのリスクを抑えられる。
| 対応材質 | 鋼管、ステンレス、ライニング管 |
|---|---|
| 加工技術 | つば出し·溶接·ネジ切り·フランジ·グルービングなど |
引用元:カワトT.P.C.公式HP
https://www.kwt-tpc.co.jp/prefab/
止水栓と継手を一体化した構造で、本来現場で行う締め付け作業が不要。ワンタッチ接続のため、配管を差し込むだけで固定できる。体が入りにくい狭い場所でも、工具を使わず短時間で施工することが可能。
| 対応材質 | ポリエチレン、ポリブテン、エルメックス樹脂管 |
|---|---|
| 加工技術 | 曲げ加工·切断加工·継手組込みなど |
※参照元:ノーラ・エンジニアリングHP(https://www.nowla.co.jp/download/certificate.php)